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禁断兄妹

第82章 つがいの鳥④



「私がいなくなったら、リン君一人でどうするの‥‥?この家でどうやって生きていくの‥‥?!」


「大丈夫だよ。なんとかする」


「無理よ、二人だから乗り越えて来られたのよ!!」


あの針のむしろに
この先臨一朗は
一人で座るの

考えただけで
胸が張り裂けそう


「由奈ちゃん。
 由奈ちゃんを失うのは、本当に、今もまだ、すごく辛くて悲しい。怖い。
 でも、由奈ちゃんを愛してるから。愛してるから、どんなに辛くても離れるよ」


「リン君‥‥っ」


臨一朗は私の頬から手を離すと
床に落ちた封筒を拾い上げた。

そのままソファに歩いていって
私のバッグを開ける。


「今日貸してあげた携帯は返してね。離婚届はここに入れておくよ」


臨一朗は私にバッグを差し出した。

澄んだ瞳には
迷いがなかった。


「さよなら由奈ちゃん。七年間本当にありがとう。
 リンはリンなりに、由奈ちゃんを愛してた。心から愛してたよ」


「‥‥っ」


こんなにあっけないの

気の遠くなるような七年間は
今ここで
突き放されるように
終わるの


「リン君、一つだけ教えて‥‥いつ離婚しようって決めたの‥‥」


「昨日。
 由奈ちゃんが拳銃を自分の頭に当てて打ったでしょ。これ以上リンと一緒にいたら、大好きな由奈ちゃんが取り返しがつかないくらい壊れちゃうと思って、決めたの」


「そう‥‥」


───行っておいで‥‥好きなだけ行っておいで‥‥───


もうあの瞬間から
決まっていたのね


「でもね‥‥
 リンは弱虫だからね、本当のこと言うと、さっきまでうじうじしちゃってたんだ。やっぱり由奈ちゃんが大好きだなあって。もっと一緒にいたい、もっと、ずっと、って‥‥」


臨一朗は手に持っていた携帯に視線を落とし
ぎゅっと握りしめた。


「‥‥幸せな時が確かにあるって言ってくれたよね。幸せな瞬間は確かにあるって」


「えっ‥‥」


それはさっき
私がツトムさんに言った言葉

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