禁断兄妹
第83章 つがいの鳥⑤
「フランス?!」
おじいちゃんは大声をあげて
見開いた目をぱちくりした後
豪快に笑いだした。
「ツトム、おめえ、たいした奴だな!フランスから霧島の店に通えってのか?!」
フランス
思いもしなかった言葉に
私の胸が
飛び跳ねた。
フランス
撮影で一度行ったことがある
ファッションの都パリ
郊外の美しい村
美味しくて素敵なビストロ
「嬢は日本だと面が割れていますし、思い切って日本を離れると良い気分転換になるかと思います。
確か嬢はお料理が得意でいらっしゃるので、本場でフレンチを学ばれるのも良いかと」
そうだ
私は料理をするのが好きだったのに
全くしなくなっていた
「フランスへ勉強しに行くってことか?わしはよくわからんが、フランスになんて住めるのか?」
「とりあえず三か月に一度日本に帰ってくれば、ビザがなくても住み続けられますし、料理学校や語学学校に通うと、学べる上にご友人ができてよろしいかと。
‥‥えー、申し訳ありません、実を言うと全て組長の受け売りです」
「なんじゃ!修斗の絵図か!」
修斗
遠くを見ていた横顔
「今申し上げたことも全部、あくまで組長の独り言というか何気ないお言葉ですが、嬢は料理を学んで自分の店を持ってはどうかと、仰っていました」
料理を学んで自分の店を持つ
ツトムさんを介した修斗の言葉は
お金はなかったけど幸せだったと私が言った
幸福な食卓の話に対しての
修斗からのアンサーのように
感じた。
───『今は潤沢な脛をかじりながら、力をつければいい。そして大人になったら、金銭的に自立できる仕事につけばいい』
『自立できる、仕事‥‥』
『それが檻を出る必要条件です』───
十三歳の時に
初めて修斗と出会った時の会話
自立できる仕事を持ち
自分の力で檻を出ろ
修斗は出会った時から
既にそう言っていた
───『私にも、できるかな‥‥』
『できる。それまでは俺が側にいます‥‥』───
修斗
今も昔と変わらず
私を檻から出そうと
してくれているの