禁断兄妹
第83章 つがいの鳥⑤
「そうだ、楽しそうだろう?お前はまだ若いんだ、楽しそうだと思ったら、なんだってやってみろ。恋愛をして結婚したっていいんだ。お前は自由なんだから」
「‥‥ありがとう、お父さん」
「うん?」
「お父さん‥‥」
頬をつけている胸が
強く波打って
背中に置かれている手に
力がこもった。
「お前の母親もな、料理がうまかったんだ‥‥血は争えんなあ‥‥」
胸に
夢が映る
フランスの美しい片田舎の
小さなビストロ
テーブルにはキャンドルを灯して
季節の野の花を
私はフレンチと和食を融合させた
温かな家庭料理をふるまい
手作りのパンやチーズ
美味しいワインを片手にお喋り
そんなお店に
今までお世話になったみんなが来てくれたら
どんなに幸せだろう
ファッションウィークには柊君
モエも連れてきてくれるかしら
和虎君は撮影隊やモデル仲間と
それともあの眼鏡をかけたイケメン霊能者と二人で来たり
修斗とツトムさんはおじいちゃんの付き添いね
本当にソムリエやギャルソンをしてくれたら楽しい
そして臨一朗
私は七年の間に手料理を数えるほどしか作っていない
作れば必ず由奈ちゃんの手作りだとはしゃいで
すごく喜んでくれたのに
もっと作れば
良かった
「お前の手料理、いつか食ってみてえなあ‥‥」
「すぐにでも作るわ‥‥今日の夜にでも」
「そうか?そうかあ、嬉しいなあ」
喜んでくれる人がいる
新しい
小さな夢が灯る
それは真っ暗だった胸の中を
温かなオレンジ色に
照らした。