テキストサイズ

禁断兄妹

第83章 つがいの鳥⑤



「これは俺の仕事の内ですからお気になさらず。
 何せ会長が、由奈の希望通りで安全で最高なところをお前が探せ、早く探せ、由奈が由奈がって、そりゃあもううるさいんです。組長も当然のようなお顔ですし」


「迷惑かけて本当にごめんね」


「会長も組長も、勿論俺もですが、嬢にはゆっくりのんびりして、心身を休めてもらいたいんですよ」


「うん‥‥ありがとう」


「それにしても会長も組長も嬢には甘い。弱い。嬢はオヤジ転がしですね。いかついオヤジが二人、揃いも揃ってころっころですわ」


「あはは。やだ、ごめんなさい笑っちゃった」


「そうそう、どんどん笑ってください。嬢は笑った顔が特にお美しい。だから俺は嬢を笑わせたくなるんです」


満足そうなツトムさん
久しぶりに声をあげて笑ったような気がして
ふと
臨一朗はどうかしら
笑えているかしら

心配してももう仕方がないのに
何かにつけて
胸が痛む。


「会長は嬢がお戻りになってから溺愛ぶりが増しましたね。負い目もあるんでしょうが、殊更可愛くて仕方がないようです」


「そうね‥‥私もおじいちゃんに対する気持ちが変わったわ。初めて直接、お父さんって呼べたしね。私の手料理を喜んで食べてくれるし、母親の話もたくさん聞かせてくれるわ」


「何よりですね。早速このプランで進めますから、フランスへ行くまでにそれほど日がないと思います。どうぞ今のうちに親交を深めてください」


「うん」


「組長とも、深めてくださいよ」


「うん?」


「組長は嬢の離婚が早く丸く収まるように、大変尽力されたんです。嬢のフランス行きが実現したのも、会長がお気を悪くしないよう組長が心を配りながら布石を打っていたからこそです。
 嬢の為にいつも組長は心を砕いておられるんですよ。どうぞ感謝をお伝えしてくださいね」


「うん‥‥」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ