
禁断兄妹
第83章 つがいの鳥⑤
霧島組の事務所を訪問した日以来
修斗とは会っていなかった。
私はもう自由に外出できるし
携帯電話もあるけれど
まだ精神的なショックが抜けきれなくて
ぼんやりしてしまうことが多い
結局神楽にいた頃と変わらないような生活
フランスへ行くことになったから
フランス語と英語を
この部屋にこもって勉強する毎日
「嬢はもう携帯をお持ちですよね。組長へ電話の一本でもしてはいかがですか」
ツトムさんは自分の名刺に修斗の番号を書いて
私に差し出した。
「嬢の携帯を買った時に組長には番号をご報告済みですから、かければ嬢だとわかってくださいます」
「ありがとう」
「嬢、かける気ないですね」
「そんなことないわ。フランスへ行く前には会いたいと思ってる」
「会長だけにではなく、組長にも手料理をご馳走してはいかがですか。幸せだったと仰っていたじゃないですか」
「そうね」
「確実に誘いませんよね」
「誘うわよ」
「喜んでくれると思いますよ。組長は非常にお忙しい身ですから、アポは早めに入れたほうがよろしいかと」
「そうね‥‥もう、入れるわよ。とりあえず今電話してみるわよ」
