
禁断兄妹
第83章 つがいの鳥⑤
それから二週間後が
フランスへ出発する日と決まった。
修斗からは連絡がなかったけれど
三か月に一度は帰ってくる予定だから
その時に会えればいいと考えていたら
出発する前日の昼間に
電話がかかってきた。
「今日行ってもいいですか」
その言い方
懐かしい
あの頃の夢や希望
そして絶望
全てが懐かしい
「うん。何か食べたいものある?」
「米とみそ汁があればいいです」
「わかった。待ってるわ」
ここはおじいちゃんの家で
おばあちゃんも住んでいる。
昔のおばあちゃんは私をあからさまに毛嫌いしていたけれど
歳をとったせいか態度は軟化している。
とは言えあまり遅い時間に修斗がこの家を出入りしたり
キッチンを使ったりするのは気がひける
修斗が来れると言った夜の八時は
ギリギリの時間のように思った。
