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禁断兄妹

第83章 つがいの鳥⑤



「修斗、背が伸びた?」


「伸びる訳ないでしょう」


「会わなかった七年の間に、すごく身体が大きくなったように感じるわ。この前も思ったけど、首とか肩とかすごくがっしりしたし、胸も厚くなってる。鍛えてるの?」


「ええ。こういった体格のほうが、威圧感があって交渉事に有利なので」


「それは建前で、どうせ女の子にモテようと思ってるんでしょう」


「バカなことを」


修斗が笑った。
前を向いているすっとした三白眼が
愉快そうに細くなると
なんだか嬉しい


───そうそう、どんどん笑ってください。嬢は笑った顔が特にお美しい。だから俺は嬢を笑わせたくなるんです───


ツトムさんの気持ちが
わかるような気がした。


「修斗は笑った顔のほうがいいわね」


「‥‥あなたも」


信号待ち
修斗が私に顔を向けた。

私と同じように修斗もリラックスしているんだろうか
柔らかな声と眼差しは
私の心を
温める。


「そうね。いつまでもメソメソしないで、これからはいっぱい笑いたい。
 楽しそうだと思ったらどんどんやるの。行きたいところに行って、会いたい人に会うわ」


私の言葉に修斗は
そうしてください、と微笑んだ。


「明日からフランスへ行って、料理を勉強して、そしていつかフランスに小さなお店を持ちたいなって思ってるの」


「いいですね」


「ツトムさんが、料理を勉強してお店を持ったらっていう修斗の助言を伝えてくれてね。それがすごく胸に響いたの。ありがとう」


「それは良かった」


「おじいちゃんもいい考えだって言ってたわ。お客さんで行くからツトムさんにウェイターをさせて、修斗はインチキソムリエだなって」


「インチキ?」


「あいつなら百万のワインも簡単にさばくぞって言ってた。確かに修斗なら千円のワインでも、平然と百万円で売りそうね」


「千円ではさすがに無理だ。せめて一万円のワインならなんとか」


「やっぱりインチキだわ」


話しながら二人で笑って
こんな空気はいつ以来だろうと
思った。

修斗は組長になってしまったから
若頭の時以上に
過酷で気の抜けない世界で生きているはず

今だけでも
頭を使わずに喋ったり笑ったりして
気持ちが楽になってくれたらいい

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