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禁断兄妹

第83章 つがいの鳥⑤



「修斗ってもう三十四、五よね。結婚はしないの?」


「したくなくても、身を固めなければ信用を得られない面がある。会長が持ってくる縁談話の中から、そろそろ決めなくてはならない」


「どこかの組の令嬢とかそういうことね」


「ええ。この世界で生きると決めているので、最善のカードを選ぶだけだ」


淡々と言うけれど
なんだか虚しい

臨一朗と結婚した時の私は
まさに今の修斗のような感覚だったのに

修斗がそうしようとしていると
本当にそれでいいのかなと
寂しく思ってしまう


「結婚したくないって言ったけど、結婚そのものが嫌いなの?ずっと独身でいたいとか」


「そのものが嫌いな訳じゃない」


「子供は好き?」


「好きです」


「私も。子供がたくさんいる家庭に憧れるわ。賑やかで楽しそう」


「ええ」


深くシートにもたれ
静かに夜景を眺めている修斗
叶うことのない未来を
その瞳に映しているんだろうか


「好きな人と結婚できたらいいわね‥‥」


「嬢」


修斗が顔だけを私に向けた。


「うん?」


「俺と結婚してください」


「ええっ?!」


思わず変な大声をあげてしまった私に
修斗は噴き出して
さも愉快そうに笑った。


「その声、その顔」


「だ、だって、急にそんなこと言うから!びっくりするじゃない!」


「冗談に決まってるでしょう。ああ笑った」


「もー‥‥そんな大事なことを冗談でも言っちゃだめよ。本当に好きな人に言うべき大切な言葉だわ」


「‥‥嬢は純粋ですね」


修斗は穏やかに微笑んだ。

皮肉でも
冗談でもない口調で


「純粋で自由な魂だ」


羨むように
憧憬を
こめるように


「修斗」


「はい」


「私はフランスで料理を学んで、フランスにお店を開いて、今度こそ檻を出るわ」


「そうしてください。俺の長年の苦労も報われそうだ」


「修斗も、出たらいい」


私を見つめる瞳に
星が流れた。


「いつかフランスに来て、お店を手伝ってよ」


修斗の逞しい喉が
ごくりと動いて

引き結ばれた唇の中で
奥歯を強く噛み締めるように
頬が震えた。

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