禁断兄妹
第84章 愛してない
飛行機に間に合うギリギリの時間まで
重ねた身体
音もなくほどけるように
離して
私は一人
シャワーを浴びた。
来た時に身に着けていた下着やパジャマを着て
部屋へ戻ると
修斗はガウン姿で窓際に立ち
窓の外を見ながら
葉巻を吸っていた。
いつもは後ろに流して固めている髪が乱れて
長い前髪が
額に落ちている。
朝焼けの街を
ぼんやりと見下ろしている横顔
軽く開かれた唇から
漂うように
煙を零して
「タクシー呼んでくれた‥‥?もう着くかな」
「マンションの正面に、五分後に来る」
シャワーを浴びる前
私が呼んでおいてと頼んだ。
修斗の運転で朝帰りして
おじいちゃんやおばあちゃんに見られたら
私も修斗も困る
「ありがとう。じゃあ私、行くね」
「まだ来ない」
葉巻を消した修斗が
私へと歩み寄る。
「五分でしょう。すぐ来るわ」
「そんな恰好じゃ身体が冷える。ギリギリに降りていったほうがいい」
「行かせてよ。泣きたくないわ」
私はコートを手に取り
袖を通した。
修斗と顔を合わせるのは
これが最後じゃない
だけど
今夜だけでいい、と言った修斗の言葉通り
身体を重ねるのは
これが最初で最後
私も修斗も
それは痛いほど
わかっている
私の夢と
修斗の人生は
交われない
「由奈」
名前で呼ばれるのも
これが最後
「顔を上げてくれ」
込み上げるものを飲み下しながら
顔を上げた。
狂おしいほど切ない瞳が
私を見つめていた。
「お前が夢を叶えることが、俺の夢だ。お前が檻から出ることが、俺の願いだ。それはずっと、変わらない‥‥」
「うん‥‥」
「だけど‥‥道を探したくなった‥‥」