禁断兄妹
第86章 時を越え運ばれし手紙、それは運命の書
「細かく話し出すときりがないから、今はざっと説明した。でもこれで大体わかるよね」
バトンを繋ぐように
奇跡的に取り戻された手紙
関わってくれた人々は勿論
和虎の情熱的な行動と信念には驚くばかりで
「お前の行動力には脱帽だ‥‥感謝しかない。それにお前だけじゃなく、要も、灰谷も、由奈も、みんなが協力してくれたんだな。何と礼を言っていいか。本当に‥‥」
「うん。奇跡的に事が運んだ。本当に良かったよ」
和虎の話を聞いた今
俺の心は
決まっていた。
「和虎。その手紙を、今読んでくれないか」
「えっ?!」
「あの時の萌が必死に取り返そうとした手紙だ。とても大事なものだったんだろう。それをニューヨークに送ってもらうまで待てない。一刻も早く内容を知りたい。今、読み上げてくれ」
「本当にいいの?」
「ああ。お前だからこそ頼めるし、お前は内容を知る権利がある」
俺と萌の為に
いつも見返り一つ求めず動いてくれる和虎
隠すことなど
何もない
「ありがとう、柊兄。わかった、読むよ」
そして電話の向こうから
カサカサと紙の音がして
じゃあ行くよ、と
真摯な声。
「謙太郎君。いや、昔のように謙と呼ばせてくれないか。
直接会って話をしたいと思っているが、もしそれが叶わなくなった時の為に、この手紙を書いておく───」