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禁断兄妹

第88章 ギフト



「ではお父様が亡くなられたことについても、少し教えてもらえますか。亡くなられたのはご病気の為ですね?」


「はい。九月に胃ガンだとわかって、その時にはもう末期状態で‥‥最終的には緩和ケア病棟に入院していたそうです」


私はお母さんやお兄ちゃんから聞いて知っていることを先生に話した。
九月に病気がわかって
十二月に亡くなったお父さん
口にすると改めて
あっという間だったことを痛感する。


「あなたのお父様はご病気で、進行も早く、随分お体が弱っていらっしゃった。非常に危ない状況にあった訳ですね」


「そうだったみたいです」


「お父様は残念ながら若くして命の灯が消えることとなってしまった。その直前に偶然あなたが居合わせたのですね。
 お父様にとっては、最後の時を一人娘の可愛いあなたと二人で過ごせて、幸福なひと時だったことでしょう。
 そしてあなたにとっても、愛するお父様と最後に親子水入らずで過ごせたことは、何にも代えられない思い出ですよね。
 最後のひと時を、奇跡的に二人で分かち合えたんです。それを思い出すことは、時を越えてあなたに贈られる素晴らしいギフトのようだと、私は思いますよ」


時を越えて贈られるギフト

なんて美しい言葉


「そんな風に考えたことはありませんでした‥‥素敵ですね。受け取りたいです‥‥」


先生は微笑みながら
深く頷く。


「確かに身近な方の死、愛する方の死などは、残された方にとって非常に辛いものです。辛く悲しいことではありますが、一つ心にとめておいて欲しいのは、死という出来事それ自体には、善も悪もないということです」


穏やかで優しい声
すうっと心に入っていく。


「例えばですが、雨が降るという出来事自体は自然の摂理で善悪はありませんが、畑の土が乾いていたから良かったと思うのか、これから出掛けるのについてないなと思うのか。どんな感情を持つかによって、その人の中で雨が降るという出来事は喜ばしいことにもなり、不運なことにもなります。その出来事に対してどんな感情を持つのかで、世界は変わるんです」


どんな感情を持つのかで
世界は

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