禁断兄妹
第88章 ギフト
私はもう
催眠状態に入りかけているのかも知れない
少しぼんやりとした感覚の中
先生に背中を抱かれながらベッドへ移動して
仰向けに寝た私に
ガーゼのような柔らかなタオルケットがかけられる。
「具合が悪くなった時は遠慮せずに言ってくださいね。吐き気がしても、ここにエチケット袋が常備してありますから、心配はいりませんよ」
「はい。ありがとうございます」
先生が指し示したベッドサイドのチェストの上には
エチケット袋やティッシュやタオルが綺麗に乗せられていた。
吐き気のことが少し不安だったから
安心する。
室内の照明が落ちて
柔らかな間接照明が灯り
先生はベッドから少し離れたところに置いてある椅子に
静かに座った。
「ではゆっくりと深呼吸からいきましょう。鼻からゆっくりと吸って‥‥口からゆっくりと吐いて‥‥」
ゆっくりと吸って
ゆっくりと
吐いて‥‥
もう心はリラックスしている
私はギフトを受け取ることを望んでいる
きっとうまくいく
きっと
勇気の火が守られることを祈っている
そう言ってくれた灰谷さん
いい報告がしたい
きっかけをくれたタカシ先輩
大親友のたかみちゃん
相談に乗ってくれた和虎さん
いつも私を愛してくれるお母さん
可愛い翼
天国のお父さん
そして
お兄ちゃん
たくさんの顔が思い浮かんで
私、全部思い出したの
数時間後にはみんなに言える
お兄ちゃんに言える
知ることは痛みだった
でも喜びも確かにあったの確かに
私はお兄ちゃんにそう言うの
そして
伝えたい想いがあるの