禁断兄妹
第88章 ギフト
針が
逆回り
見たこともない
不思議な光景
くるくる
くるくる‥‥
「針と一緒に時間が戻っていきます‥‥徐々に‥‥時間が戻っていきます‥‥時間が戻っていきます‥‥」
回り続ける針
とても不思議な光景
「針はまだ動いていますね‥‥私が三つ数えたら、その時計は止まりますよ‥‥あなたが転んで頭を打つ、少し前で止まりますよ‥‥」
転んで頭を打つ
少し前
「止まりますよ‥‥さん、にー‥‥いち‥‥」
わ
止まった
あれ
なんだか心臓が
息が
苦しい
「怖くなったら目を開けましょうね‥‥あなたが見ているのは遠い過去の出来事です。過去の出来事は、今のあなたを傷つけることはできません‥‥」
そうだわ
全ては
遠い過去のこと
今の私はここにいる
息もちゃんとしている
「何か感じますか‥‥?」
「苦しいです‥‥」
「どうして苦しいのか、わかりますか‥‥?」
「不安で‥‥怖くて‥‥息苦しい‥‥涙が出てくる‥‥」
「不安で怖いから、息が苦しいんですね‥‥」
ちゃんと呼吸をしましょうね、と先生は言葉を続けて
「はい吸って‥‥吐いて‥‥そうです。楽に呼吸をしながら、見ていきましょう‥‥
何か周りの景色は見えますか‥‥?」
ここはどこだろう
座ってる
動いてる
「乗り物‥‥向かってます‥‥どこかへ‥‥」
「どこへ向かっていますか‥‥?」
「知らないところ‥‥行ったことがない‥‥でもそこに柊がいるから‥‥」
「お兄様が‥‥柊さんがいるお店へ向かっているんですね」
「はい‥‥」
そう
私は雑誌の切り抜きを持って
電車
そうだわ
私は電車に乗っている
「電車に乗って‥‥ファッションショーのイベントをしているクラブへ‥‥」
柊がゲスト出演するって
この切り抜きに
あれ
柊
シュウ
どうして私はお兄ちゃんを名前で呼んでいるの‥‥?
お兄ちゃんを柊と名前で呼んでいるのは翼でしょう‥‥?