禁断兄妹
第88章 ギフト
「お父様はご病気で、進行も早く、随分お体が弱っていらっしゃった。非常に危ない状況にあった‥‥先ほどそう話しましたよね‥‥
お父様の命の灯は、残念ながら既に弱く、小さくなっていたのです。それが消える直前に、偶然あなたが居合わせたのです‥‥あなたは偶然居合わせたのですよ‥‥偶然がもたらした二人の時間は、幸福な奇跡です‥‥」
幸福な
奇跡
「苦しい思い込みは、もう手放しましょう‥‥そして、幸福な奇跡の時間を思い出しましょう‥‥それは時を越えてあなたに贈られるギフトです‥‥」
もう手放して
そして
受け取る
「あなたの心の準備ができるまで、ギフトは消えることも無くなることもありませんから、無理をしてまで今受け取ることはありません。
でも、あなたは先ほど、素敵だ、受け取りたいと言いましたよね‥‥手放せば、そのスペースにギフトが贈られますよ‥‥
体の力を抜いて、リラックスして‥‥鼻から息を吸って、吐いて‥‥」
額に置かれていた先生の手が
聞き取れない言葉と共に
私の頭に
首に
肩に
そっと押し当てられていく
柔らかに
優しく
手当
何かを
癒すように
「受け取りたい、です‥‥」
手放そう
踏み出そう
そこが
何もない真っ暗な闇だと
しても