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禁断兄妹

第88章 ギフト



───そうかそうか、フルートか。練習は部活だけでやってるのか?
 もっと真剣にやりたいなら個人レッスンにも通ったらどうだ?───


───お母さんとよく相談しながら、萌のやりたいようにやってみなさい。
 音楽もね、それだけで食べていけるのは一握りの人間だけだ。でも好きなことなら、チャレンジしてみなさい
───
 

鮮やかに蘇る
お父さんの声
優しい笑顔



お父さんとフルート奏者になる夢のことを
たくさん話したわ

お父さんずっと笑顔だった

嬉しそうに私の話を聞いて
何度も頷いて

眠そうだった目はいつの間にか
キラキラ
して


───萌。俺は期待を持たせるようなことは言うのは好きじゃないから、あえて言うよ。
 お父さんのこれからのことは、覚悟しておきなさい。
 まだやるべきことが残ってるから、それだけは方をつけてから逝くつもりだけど、この身体にガタが来てることは確かなんだ───


───でもね、もしこの姿形がなくなっても、ちゃんと見てるから。お父さんは萌のこと、いつだって応援してるから。
 それは今もずっと先も、そばにいても遠く離れても、変わらないよ────


優しい言葉も

切ない言葉も

どれも全て
愛に満ち溢れて
輝いて


「ありがとう、お父さん‥‥ありがとう‥‥」


ありがとう

生まれてから今まで
何度この言葉を口にしただろう

今改めて
かけがえのない言葉に感じる

心から
深く
今の気持ちを言葉にする

ありがとう

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