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禁断兄妹

第88章 ギフト



「お父様の姿を見ることができましたね‥‥お父様の声を聞くことができましたね‥‥」


「はい‥‥嬉しい‥‥」


本当に嬉しい
とても嬉しい

いつも私を見てる
応援してる
そう言ってくれたの


「良かったですね‥‥嬉しいですね‥‥」


「はい‥‥とても嬉しい‥‥」


そして
私は知っている

お父さんは
この後


───なんだか急に‥‥気分が‥‥───


お父さんは
目を閉じてしまった

でも
一生懸命目を開けて
言ってくれたわ


───‥‥お前のせいじゃない‥‥───


お父さんはそう言ってくれた
その言葉を
私は信じるの

苦しい思い込みを
もう私は
手放している


───ガタがきてるって言ったろ‥‥こんなに急に来るとは‥‥誤算だったが‥‥───


───‥‥机の中の‥‥手紙‥‥───


あっ


「手紙‥‥!」


手紙

そうだわ手紙

お父さんが私に言ったわ
机の中の手紙


「もし俺がこのまま喋れなくなった時は、それをケンにって‥‥
 
 ケン‥‥?私は渡してないわ‥‥あの手紙はどうしたの‥‥?手紙はどこにいったの‥‥?」


お父さんが力を振り絞って
私に託したの

きっとすごく大事な手紙なのに
私はそれを
どこに


「落ち着いて。記憶が記憶を呼ぶのです。焦らずに辿りましょう‥‥

 お父様から何か手紙を託されたのですね‥‥その後あなたは柊さんに会いに病院を出ていますね‥‥さっき見た電車の中ですよ‥‥その手紙を持っていますか?」


「勿論持っています‥‥ちゃんと鞄の中に‥‥」


無意識に口にして



そうだ鞄の中にしまって
そして病院を出て
電車に乗って


「手紙は鞄にしまってある‥‥大丈夫、鞄の中にあります。

 そこから進むことはできますか‥‥?

 電車からおりて、柊さんがいるお店へ行って、あなたは柊さんに会えましたね‥‥?」


そうだわ

柊に会えた
柊は優しかった

でも
お仕事中なの
たくさんの人が
私と柊を遠巻きに見てるわ



まただわ
どうして私は
お兄ちゃんを柊と呼んでいるの

もやもやする
霧がかかってるよう

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