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禁断兄妹

第88章 ギフト



「心を落ち着けて、焦らずに出来事を見ていきましょうね‥‥呼吸を忘れずに‥‥」


ゆったりとした声になだめられて
深呼吸


「あなたはもうギフトを受け取っているのです‥‥夜が明けてゆくように、自然に、全てが明らかになっていきますよ‥‥」


夜が明けてゆくように
自然に

このもどかしい霧も
晴れてゆく

落ち着こう


───お母さんは?帰ってこれるのか?───


優しい声が聞こえて

私を見つめる美しい瞳が
現れた

片膝をつき
私の両手を握ってくれた柊


───最終便には間に合うって‥‥でも着くのは夜中だよ‥‥
 ねえ、お父さんこのまま死んじゃったらどうしよう、私のせいで、私、が‥‥っ───


これは苦しい思い込みに
囚われていた私

自分のせいだと
柊に不安と恐怖をぶつけた


───どうして萌のせいなんだ。そんなことあり得ない、落ち着け───


───私が、いっぱい喋りかけたの、お父さん疲れてたのに、全然気がつかないで、ずっと‥‥!───


───関係ない、考え過ぎだ───


───大丈夫、父さんは死なない。少なくとも、今じゃない───


私の目を見つめて
力強く言ってくれた柊

落ち着き払って
微笑んでくれた

柊だって
不安や焦りがあったはずなのに


「柊‥‥優しい‥‥こんな時でも、すごく、優しい‥‥」


「柊さんは優しいですね‥‥あなたを心から愛して、溢れる優しさで包んでくれていますね‥‥」




私を呼ぶ声

大きく両手を広げた姿

堂々と開かれた胸は
愛を放っている

そして
待っている

広げた両手は
何かを
誰かを
抱きしめる為に待っている

ずっと


「柊が待ってる‥‥会いたい‥‥」


その腕の中へ
飛び込みたい


「愛は離れていたとしても感じられますよ‥‥今、柊さんの愛を感じてみましょう‥‥
 呼吸をするたびに、柊さんの愛が、あなたを満たしていきますよ‥‥柊さんの愛が、あなたの身体を隅々まで満たしていきますよ‥‥」


吸って
吐いて

私を満たしていく


オーロラ

綺麗
指先まで輝く


これはあなたの愛

深く
強く

力が満ちてゆく


「手紙はまだ鞄の中ですね‥‥
 では、帰り道を歩くあなたを見ることはできますか‥‥?怖くなったら、目を開けましょう。すぐに開けましょうね‥‥」

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