禁断兄妹
第88章 ギフト
帰り道
真っ暗で怖い
一人で走ってる
柊と一緒に戻りたかったけれど
私は一人
早く病院に戻らないと
お父さんが
どうしよう
怖い
早く
急がなきゃ
「その時の感情まで思い出す必要はありませんよ‥‥何が起こったのか、出来事だけを見ていきましょうね‥‥」
「私は‥‥一人で走っています‥‥」
「そうですね、あなたは病院へ戻ろうと、駅へ向かっていますね‥‥」
「来た道を、走って戻っています‥‥」
怖い
これ以上走り続けると
恐ろしいことが起こる
必ず起こる
「萌さん、呼吸を整えましょう。鼻からゆっくりと吸って‥‥口からゆっくりと吐いて‥‥
それは遠い過去の出来事です‥‥あなたを傷つけることは決してできません‥‥」
走り続けた先で起こる出来事
それは
遠い過去の出来事
どんなに恐ろしいことが起こっても
それは
遠い過去の出来事
私を傷つけることはできない
わかってる
でも
怖い
足がもつれる
息が苦しい
「柊さんの愛はあなたと共にありますよ‥‥あなたを満たしていますよ‥‥」
柊
私は立ち止まらない
走りたい
走る
走り続ける
今の私にはその力がある
走り続けた先に柊がいる
両手を広げて柊が待っている
柊
柊
───萌ちゃん!ストップ、ストップ!!───
「‥‥ッ!!」