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禁断兄妹

第88章 ギフト



「本当に辛い思いをしましたね‥‥苦しかったね‥‥悔しかったし、悲しかったね‥‥あなたは何も悪くない。何一つ悪いことはしていないのに‥‥」


肩を抱いてくれている先生の手に
力がこもるのを感じた。


「あなたは理不尽な極限状態の中で、よく耐えました‥‥本当によく耐えた‥‥」


先生の言葉と熱が胸に沁みて
吐息と
涙が零れる。

本当に怖かった
辛かった

今もざわざわと恐怖感は押し寄せ
震えも止まらない
けれど


「灰谷さんが助けてくれたから‥‥灰谷さんが来てくれたお陰で、私は救われたんです‥‥」


───萌さん!!───


雷のような音を立てて
灰谷さんが現れた時の衝撃
はっきりと覚えてる


「灰谷さんが私を助けてくれたお陰で‥‥私は‥‥柊を守ることができた‥‥」


あの男が柊を狙って投げたナイフから

私は柊を守ることができた

その為に私は頭を打って
記憶を失ってしまったけれど

あの時柊を守れなかったなら

世界中のランウェイを歩く柊は
いなかったかも知れない

今の柊はなかったかも知れない

だから
後悔することは何もない

何一つないわ



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