禁断兄妹
第88章 ギフト
「あなたは間一髪のところで弘至君に救い出され、あなたの純潔は守られた‥‥守られたあなたの清い心と身体は、今度は柊さんを守った‥‥美しい愛の連鎖ですね‥‥」
差し込む光のような
先生の声
「‥‥先生は‥‥全部知っていたのですね‥‥」
「ええ‥‥
実は弘至君が熱のこもった電話をくれた時に、非常にデリケートな問題が含まれているから慎重にしてくれと言われたんです。それで彼が知っていることを全て話してもらいました。あくまで催眠療法を安全に成功させる為の情報共有として、お許しください」
「最初にも言いましたが、灰谷さんのことも先生のことも信頼していますから、構いません‥‥」
嫌な気持ちはない
むしろ知っていてくれて良かったと思う
とても繊細で
安心感のある導きは
全てを知っていたからこそ
「弘至君から話を聞いておいて本当に良かったと思います。聞いていなければ、あなたを安全に導くことができなかったかもしれません。
‥‥吐き気が収まってきたようですね。もう一度横になって、身体を休めながら話を続けましょうか。すべての過程が大事ではありますが、思い出した後というのが、とても大事ですからね」
私は先生に介助されながら口を漱ぎ
乾いた喉を潤し
もう一度ベッドに横になった。
「私が弘至君から聞いて知り得た事実を、あなたに話して聞かせたり、無理に手を引いても意味がない‥‥あなたが自分自身の力で記憶を取り戻すことに、意味があったのです‥‥そしてあなたはそれを成し遂げた。本当に良かった‥‥」
「先生のお陰です‥‥ありがとうございます‥‥」
先生がいてくれたから
先生が導いてくれたから
思い出せた
「私はガイドでしかありませんよ‥‥足を進めたのはあなたです。
それにあなたは、恐怖や苦しみといった感情を強く感じたはずですが、灰谷さんが助けてくれた、そして柊を守ることができた、と言いましたね‥‥辛い出来事の中のポジティブな面に意識を向けましたね。素晴らしいことです」
確かに今も恐怖感はある
でも
あの時のことに後悔はないから
愛する柊を
守ることができたから
「先生は、その出来事に対してどんな感情を持つのかで世界は変わると仰いましたよね。よくわかります‥‥」
今の私の目に
世界は新しく
美しく
映っている