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禁断兄妹

第88章 ギフト



この七年間で
私は二十歳になった

柊は強く逞しくなって
夢を叶えた

私達に
この七年間は必要な時間だった

強がりではなく
今の私は
心からそう思う


「そんな風に受け止めてくれるんですね‥‥」


灰谷さんは切なくその瞳を細めた。


「萌さん。私は、あの時自分が言った言葉を、実は後悔していました‥‥
 私があんなことを言ったから、あなたの記憶は戻らないままなのじゃないか、私の言葉は呪いのようなものになって、彼への愛を封じ込めてしまったのではないかと‥‥」


呪いだなんて

私は笑って
首を振った。


「灰谷さんの言葉に力があったとしたら、それは素敵な魔法だったんです。
 魔法は春が来て雪が溶けるみたいに、先ほど解けました‥‥」


「萌さん‥‥」


「私はもう何も怖くありません。柊を愛する心のままに、進んでいこうと思っています」


灰谷さんは眩しそうな表情で
じっと私を見つめて
そして


「ならば、柊さんに早く会いたいですよね‥‥」


「はい」


今すぐにでも

一刻も
早く


「彼は今北海道にいるそうです。あなたが望むなら、空港までお送りしましょう」


「えっ‥‥北海道に、今日、柊がいるんですか?!」


ええ、と頷く灰谷さん

柊が今何故北海道にいるのかわからないけれど
奇跡のよう


「チケット代くらいは私に出させてください。
 
 ‥‥どうですか?」


「もしかして、その為に、ここで待っていてくれたんですか?」


そう言ったら
灰谷さんは照れたように頭をかいて


「萌さんが記憶を取り戻すことは信じていたので、記憶を取り戻した萌さんが真っ先にどうしたいか、私はわかっていましたし‥‥まあ、おせっかい以外の何物でもないのですが、あなたを早く柊さんに会わせてあげたくて───」


灰谷さん

どうしてそんなに
優しいの


「灰谷さん‥‥っ」


私は両手を伸ばし
灰谷さんの片手を取った。


「わッ!!」


声を上げて
後ろへ尻もちをついた灰谷さん

それでも私は
その手を離さなかった。

両手に余るような
ゴツゴツとした大きな手
あの日と
同じ


「ありがとう、灰谷さん‥‥」

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