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禁断兄妹

第89章 禁断兄妹



モデル仲間からKENTAROのカフェの場所を聞いた時
俺は少なからず衝撃を受けた。

そこは
母さんが眠る墓地へ歩いて行けるほどの近さだったからだ。

自然が豊かで眺めはいいが
アクセスの悪い街外れの高台
しかも墓地の近く

今は隠れ家カフェとして人気があるようだが
そんな場所を選んで店を開こうと普通は考えない

しかも住まいまで近いなら
KENTAROの気持ちは聞くまでもない

夏巳の側にいたい

そんな想いが
透けて見える


同じだからだ

もし萌が俺を残しこの世から去ってしまったなら
俺は萌の眠る場所の近くにいたい

墓など形でしかない
わかっていたとしても側にいたい
そう思うだろうから


「でも、今の想像はナシだな‥‥」


例えばの話だとしても
俺を残して萌がこの世を去ることなど考えたくはない

残されるくらいなら先のほうがいい
萌に看取られて死にたい

いや
死にたくない
萌を残して死ねない

ずっと一緒にいたい
永遠に一緒にいたい

どうすれば永遠に共にいられる

胸元の内ポケットの中
昨日何度も読み返した父さんの手紙が
息づいている。


肉体は必ず滅ぶ
それは免れない

想いは
永遠か

愛は
永遠か


粉雪の舞い落ちる白い空

受け止めた雪も
吐く息の白さも
一瞬で消えてゆく

この刹那の世界で
永遠を
夢見る

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