禁断兄妹
第89章 禁断兄妹
微動だにせず
俺をじっと見つめているKENTARO
身長は俺とほぼ変わらない
四十代後半のはずだが最盛期の頃と変わらない体型
引き締まった頬
真っ直ぐに合う目線に
鏡を見ているような感覚を覚える。
似た系統の顔立ちだと思っていたし周囲からそう言われることもあったが
今改めて思う
俺と似ている
姿かたち以上に
何か深いものが
共鳴する。
「先ほどカフェのほうへ寄らせて頂きましたが、ここでお会いできるとは思いませんでした」
当たり障りのない言葉を続けてみたが
KENTAROは無言のまま
俺が足を踏み出すと
KENTAROは間合いを維持するように
同じ歩数だけ後ずさりする。
墓前に花を置き
軽く手を合わせた俺は
KENTAROに向かい合った。
まだじっと俺を見据えている瞳
俺の皮膚の下に焦点を合わせているような
鋭くも
透明な視線
俺の中の一ノ瀬夏巳を
探しているのか
「日崎謙太郎さん。あなたに真実を聞きに来ました」
母さんの旧姓であり
KENTAROの本名でもある『日崎』
それでもKENTAROの様子に変化はない
まるで俺の声など聞こえていないよう
「私の父である一ノ瀬巽は七年前にガンで亡くなりましたが、父は死ぬ間際にあなたに向けて手紙を書いていたんです」
それがこれです、と
俺は胸元から父さんの手紙を取り出し
掲げて見せながら
手紙という言葉に
KENTAROが強く反応したのを感じた。
「父は死ぬ前にあなたと直接会って話がしたいと願っていましたが、病状が末期だったこともあり、会うことが叶わなかった時の為にと、あなたに問い掛けたい内容をこの手紙を書き残していたんです。
様々な事情からこの手紙は今まで日の目を見ることがありませんでしたが、先日奇跡的に発見されて、私の元にやって来ました。
私はもう中を読ませてもらいました。
KENTAROさん、あなたもこの手紙を読んで、そして父の問い掛けに答えてくれませんか」