禁断兄妹
第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①
ここは札幌から離れた街
墓地から出ているシャトルバスにタイミングよく乗ることができた俺達は
一番後ろの席に並んで腰かけ
ほっと顔を見合わせた。
乗客は少なく
前方に数人がいるだけ
聞かれて困るような話をするつもりはないが
周りに人がいないのはありがたかった。
「とりあえず、札幌にある俺のマンションに行こうか」
「マンションを持ってるの?」
「ああ。萌には話したことがなかったな。俺が生まれた時から、東京へ引っ越すまで住んでいた家だよ」
再婚を機に東京へ引っ越してくる時に父さんが売却したが
その時から俺は
大人なったら買い戻そうと思っていたことを
萌に話した。
「買えるだけの余裕ができてから、こっちの不動産会社に、売りに出たら声をかけてくれと話しておいたんだ。そうしたら数年前に声がかかってね。やっと手に入った」
「そうだったの。すごい‥‥」
「俺は昨日そこに泊まって、今日はそこから電車とタクシーでKENTAROの店へ行ったんだ」
墓参りに北海道へ来た時くらいしか使わないけれど
愛着のある懐かしい家
ホテルに泊まるよりも落ち着くから
俺はとても気に入っている。
「今日はそこに泊まろう。俺が寝泊まりするくらいの物しかないから、必要なものは買って帰ろうか」
「うん!」
嬉しそうな笑顔に
甘苦しい感情が胸を満たす。
「それとも‥‥ホテルのほうがいいかな‥‥」
声を落とし
繋いでいる手に
そっと力をこめた。
「う、ううん‥‥柊の暮らしてたおうちに、泊まってみたい」
俺が言葉に忍ばせた熱に気づいた萌は
顔を赤らめ俯いて
「それに‥‥スモールステップを積み重ねなきゃいけないし‥‥」
「え‥‥?」
小声になった萌に耳を寄せると
記憶を取り戻した経緯は後で詳しく話すけれど、と萌は前置きして
そのクリニックの先生に
パートナーとはスモールステップを積み重ねるようにと
アドバイスを受けたという。
「そうか‥‥なるほどな」