禁断兄妹
第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①
記憶を取り戻した萌を病院の外で待っていた灰谷は
俺が北海道にいることを伝え
すぐに会いに行きたいだろうから空港まで送る、チケット代も出す、と申し出てくれたという。
KENTAROに会いに北海道へ行くことを
和虎を通して灰谷にも伝えていたが
KENTAROがどこにいるかまでは灰谷は知らなくて
そこで萌は和虎に連絡して
俺の動きやKENTAROの店の場所を聞いた。
和虎は詳しい地図と餞別まで持って
羽田まで見送りに駆けつけてくれたそうだ。
「柊がKENTAROさんに会いに行ったって聞いたから、空港へ行く前に灰谷さんに家に寄ってもらって、夏巳さんの手紙を持ってきたの。でも柊に早く会いたくて急いでいたから、それしか持ってこなくて。お母さんと翼もびっくりしてたけど、後でちゃんと話すねって言って、飛び出してきちゃった」
確かに萌が持っているのはショルダーバッグ一つだけ
取るものもとりあえずここへ来たことがわかる。
空港からKENTAROの店へ
時間を潰してまた来ると言った俺の情報を店長から聞いて
あの墓地へたどり着き
管理棟を訪ね
俺が訪れていることを突きとめた
初めての土地で
たった一人で
俺の足取りを追った萌の行動力には驚くばかりだった。
「萌は俺が思うよりもずっと行動力があって、勇敢だな。びっくりしたよ」
「みんなが助けてくれたの。私は一刻も早く柊に会いたくて、夢中だっただけ‥‥」
萌は小さく首を振りながらそう言うと
夢見るような瞳を俺に向けて
「柊に電話をすれば、居場所もすぐにわかったと思う。でも電話をしてしまえばそこで色々説明が必要になるし、想いも溢れてしまいそうで‥‥それは嫌だったの。記憶を取り戻したことも、愛の言葉も、直接会って伝えたかったの」
「萌‥‥」
ストレートに想いを伝えてくれる萌
いじらしくて
たまらなく愛おしくて
抱きしめて口づけたい気持ちが
高まるけれど
「‥‥スモールステップ、スモールステップ。わかってるよ」
「ふふ‥‥」