禁断兄妹
第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①
お買い物でかなりの荷物になった私達は
タクシーを使って柊のマンションへ向かった。
「昔は周りがこんなに開発されてなかったんだけどね。随分都会になった」
その言葉通り
札幌の中心部に近いそこは
新しいマンションやビルが建つエリア
十四階建ての
九階の一番端
鍵を開けた柊は優雅な所作で
「どうぞ、姫」
「わあ、お邪魔します」
先に通されて
緊張しながら中へ
私の後に続いて入った柊が
ドアに鍵をかけ
明かりをつけると
すっきりと片付いた玄関と廊下が浮かび上がった。
「さあ、中に入って」
「うん」
ここで
小さかった頃の柊が暮らしていた
夏巳さんとお父さん
今はもういない二人と柊が
暮らしていた
何か神聖な気持ちになって
靴を脱ぎ
揃えながら
私は心の中でもう一度
お邪魔します、と呟いた。
冷えた廊下を歩いて
突き当りのドアを開ける。
真っ暗な空間に
玄関の明かりが届いて
室内の様子が目の前に広がった。
「わー、広い」
「東京の家のほうが全然広いけど、こっちは家具が少ないから広く感じるかもな。今通って来た廊下のほうに、あと二つ部屋があるよ」
昨日掃除しておいて良かった、と言いながら
柊は荷物をフローリングの上におろすと
照明や暖房をつけて回る。
明るくなった室内は
本当に家具が少なくて
モノトーンで統一されたシンプルな空間
カーテンが引かれている窓際に
窓のほうを向いた一人掛けのソファと
小さなランプが乗ったサイドテーブルが置かれている。
どれも選び抜かれてここに存在しているような
柊らしいインテリア
「高層階でもないし、本当に普通の家だけど、中は全部リフォームして新しくしてあるから、萌も快適に過ごせると思うよ」
「すごく素敵。柊のお城ね」
「これからは萌のお城でもあるからね。気に入ってくれたなら良かった」
柊は首を傾け
魅惑的に微笑む。
「ね、カーテンの外を見てもいい?」
「ああ勿論。何でも好きに見てごらん」
後ろをついてきてくれる柊
背中にドキドキと安心感
二つを同時に感じながら
私は顔の分だけカーテンを開けた。
「わあ‥‥」
バルコニーの向こうには高い建物がなく
開けた視界
そこには白い街が
広がっていた。