禁断兄妹
第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①
たくさん見える建物の屋根も
道路も
全部白い
そして街灯や家々の明かり
ビルやマンションの窓の明かり
車のライト
銀白の中に
たくさんの明かりが散りばめられて
「綺麗‥‥」
「ちょうど雪が降って来たな」
「ね、降って来た」
「風がないから、雪がまっすぐに落ちて来るな」
「スローモーションみたいで、本当にすごく綺麗‥‥」
柊を見上げると
私を包み込むような瞳
「ここへ連れてきてくれてありがとう、柊」
「俺が連れて来たかったんだよ」
想いをこめて
見つめ合って
その幸せな気持ちのまま
窓の外に向き直った私のウエストに
後ろから
ゆっくりと回された両手
「‥‥これは、いいよな。抱きしめるまでは、いいよな‥‥?」
耳元で
少し遠慮がちに囁かれて
胸がきゅっと音をたてる。
「うん‥‥」
抱き合うことは
夏巳さんのお墓の前でもしているし
いいんじゃないかな
何より私が
こうしてもらうことを
求めてる
優しく
柔らかく
腕の中に囲うように抱かれながら
降る雪を眺める幸せ
「‥‥寒くないか?家の中が暖かくなるまで、もう少しかかる」
「大丈夫‥‥」
柊の広い胸の中
背中から伝わるぬくもりに温められて
それ以上に心は
じんと熱い。
「柊はずっとこの白い景色を見てきたのね」
「ああ。物心ついた時からずっとここに住んでいたからね。
父さんが美弥子と再婚して東京へ引っ越したのが、小学四年の時だったかな」
「引っ越すの、嫌だった?」
「多少は未練があった。でも萌と一緒に暮らせる喜びのほうが大きかったよ」
柊の声は穏やかだったけれど
こうして買い戻すくらいだもの
多少ではなく
ずっと胸に秘めてきた想いがあるはず
それはきっと夏巳さんへの想い
お父さんへの想い
七年前
私は柊に
私達が出会う前の
北海道での暮らしのことを聞いたことがある
その時柊は
遠く
切ない瞳をして
───ごめん‥‥なんだか上手く話せそうにない───
───悲しいとか嫌だとか、そういうんじゃないんだ‥‥上手く話せないだけ‥‥───
そう言って
ほろ苦く微笑んだことを
覚えている。
柊の中には
私が触れることのできない世界が
ある