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禁断兄妹

第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①


「‥‥柊は雪が好きだから、冬が好きなんだよね」


「ああ。冬は寒いけど、白く染まる街が好きだね。
 雪が音を吸い込むのか、冬の夜はしんとして静かなんだ。それも好きだよ」


「なんだか、わかる気がする‥‥」


柊が持っているどこか静寂な空気感
それはこの雪景色と
ここで暮らした懐かしい日々が
ずっと柊の胸にあるからなのかも
しれない


「今回はタイミングが合わなかったけど、今度また北海道に来て、雪まつりも行こうな」


「覚えてくれていたの?」


雪で作ったお城が見たいと
七年前に私が言った言葉を
柊は覚えてくれていた。


「勿論。冬の北海道に、きっとまた来よう」


「うんっ」


せっかく来た北海道だけれど
私達は明日の便で東京に帰ることにしていた。

今日は土曜日だけれど
私には月曜日から学校の講義やレッスンがある
柊は休まないほうがいいと言って
明日の午後の便で帰ることにした。


───日々をおろそかにしないようにしながら、愛を育んでいこう。俺達のことを、母さんにもちゃんと話をしたいしね───


バスの中で柊にそう言われた時
私はせめてもう一日くらい北海道にいてもいいかなって思っていたから
ちょっぴり残念な気持ちになったことは
内緒

やっぱり柊は
大人だと思う。


「さてと。
 お腹が空いただろう。ご飯にしようか。それとも身体を温めるのに、先にお風呂がいい?」


柊が何気なく言った
お風呂、という言葉に
ドキンと胸が波打った。


「今、ドキッとした?」


悪戯っぽく聞かれて


「う、うん」


「ふふ、素直だな、萌は。
 ‥‥実は俺も自分で言って、ドキッとしたけどね」


思い出してしまうな、と
小さく笑う柊

私も
つい思い出してしまって
頬も身体も熱くなる。

七年前
バスルームで
柊と愛し合った時のこと

あの時の自分はまだ十三歳だったのに
大人の柊と
深く激しく
愛を交わしていた
なんて大胆だったんだろうと思う。

部屋の温度も湿度も増したような
もどかしい沈黙


「思い出に浸り過ぎてはいけないね。
 よし、ご飯にしようか。食べながら、ゆっくり話をしよう」


柊は明るい声を出した。

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