禁断兄妹
第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①
二人掛けの小さなダイニングテーブルに
買って来たオードブルを二人で並べて
グラスにワインを注いで
柔らかな間接照明の明かりの中
静かに乾杯して
二人だけのディナーの始まり。
不揃いの食器やグラスに柊は
新生活の始まりっぽくて悪くないな、と
楽しそうに微笑む。
これから二人分の食器やカトラリーを揃えていこう
そんな会話が
なんだか新婚さんみたいで
胸がくすぐったい。
幸せな気持ちで柊を見つめて
見つめ返されて
そして柊は
その愛に満ちた笑顔のまま
穏やかに口を開いた。
「‥‥俺は萌に隠すことは何もないから、聞きたいと思ったことは何でも聞いてくれ。何でも答える。
けれどね、萌は記憶が戻ったばかりだから無理をしてはいけないよ。萌は話したいことだけを話せばいいから。俺が話すことも、聞くのが辛く感じたなら、正直に言ってくれていい」
柊は
七年前に私があの男に襲われた時のことや
お父さんが危篤状態になった時のことを
無理に口にすることはないのだと
言いたいのだと思う。
はい、と頷きながら
柊の優しさと気遣いに胸がいっぱいになる。
「俺が今言ったことを忘れずに話をしよう。
‥‥まず萌に聞きたいことがあるんだけれど、KENTAROに渡してしまったあの父さんの手紙、萌は中を読んでいたのか?」
「ううん。読んでいないし、何が書いてあったのかは知らないの」
私の言葉に
柊は少し黙って
「そうなんじゃないかと思ってたけど、やっぱりそうか。
じゃあ、俺とKENTAROの関係性について、何か推測することもないだろうね」
「柊とKENTAROさんの関係性‥‥?」
夏巳さんの手紙を読んで
KENTAROさんの反応を見て
私は二人の愛を知ったけれど
柊とKENTAROさんの関係性までは考えていなかった
そう柊に伝えたら
「何も知らなくても、俺を愛してると、ずっと一緒だと、言ってくれるんだな」
「うん。七年前と何も変わらない。ううん、あの頃よりももっと、愛してる‥‥」