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禁断兄妹

第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①


二人静かに抱き合い続けて
そして柊は
父さんの言葉を教えてくれてありがとうな、と囁くと
私の背中を優しく叩いた。


「‥‥さあ、少し食べようか。食べながら話そうって言っていたのに、これじゃいつまでも食べ終わらない」


苦笑いを滲ませた声でそう言うと
柊は私の脇の下に手を入れて軽々と持ち上げ
自分の胸を背もたれにするように
私を座り直させた。


「俺達が初めて会った日、レストランで会食をしたんだけど、萌はこんな風に俺の膝の上に座って食べたんだよ」


俺のノスタルジーに付き合って欲しいな、と言いながら
柊は向かい側に置いたままのグラスやお皿を引き寄せて
私の箸を手に取る。


「姫はどれをご所望?ローストビーフ?それともエビチリ?」


見上げた柊の
テーブルの上を楽しげに眺めているその瞳が
赤く潤んでいるように見えて
胸を突かれる。

柊は
涙を見せたくないのだと思う

いつも穏やかで
感情的になることなく
どっしりと構えている柊

強く気高い心

本当にすごいと思うし心から尊敬している
けれど今は
それが少し切ない


「‥‥ポテトサラダ」


「かしこまりました」


ひと口分箸に取り
口元に運ばれたポテトサラダ

横から私の顔を覗き込む柊の視線を感じながら
子供のように口を開けた。


「どう?」


「‥‥美味しい」


「それは良かった」


次は何がいいかな、と微笑む柊に


「ね、柊も食べて」


「うん?」


私は柊の箸を取って
同じようにポテトサラダを一口分
柊の口元へ運んだ。


「はい、あーん」


「萌にこんなことをしてもらえる日が来るなんてな‥‥」

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