禁断兄妹
第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①
私の言葉に
柊の瞳が更に熱っぽく煌めいて
「それは俺の台詞だ。俺との愛を思い出してくれて、ありがとう。今まで他の男のものにならずにいてくれて、ありがとう‥‥」
結んだ視線はほどきがたくて
二つの唇は重なることを求めて
言葉を失ってしまう
胸が締めつけられるような
濃密な沈黙
「スモールステップの一歩を踏み出すタイミングって、いつなのかな‥‥」
思わず口にしたら
柊は
悩ましい微笑みを浮かべている唇を開いて
「そうだな‥‥想いが満ちて、いっぱいになって、抑えようとしても止められないほどに高まって初めて、一歩を踏み出す感じかな‥‥それが萌の心身にとって、自然なタイミングのように思うよ」
静かにそう言うと
ワイングラスに手を伸ばし
その縁を指先でなぞった。
「こんな風に二人でいると今にも溢れてしまいそうだけど、その時は少なくとも記憶を取り戻したばかりの今日ではないだろうね。大きなグラスをイメージして、時間をかけていっぱいにしていこう」
「うん‥‥」
一瞬一瞬
愛しさはつのる
切なくなるほどに
でも
まだ焦ってはいけない
もっとだ、と
柊は言っている
想いが満ちて
いっぱいになって
抑えようとしても止められないほどに高まった時
私の心と身体は
溢れる想いに突き動かされるように
一歩を踏み出すのだろう
その時を
柊は待ってくれている
「俺は萌に触れられないっていう耐えがたい時間を、七年耐えた男だからね。我慢強さは相当鍛えられたから、俺のグラスはかなり大きいよ」
柊は冗談めかして微笑むけれど
どれほど耐えがたい日々だったかは
想像に難くない
「ねえ‥‥柊って本音ではタカシ先輩のことをどう思ってたの?」
私の問い掛けに柊は
本音?と笑って
「普通に喋ったりしてたけど、本音は嫉妬心でメラメラしてた、とかそういうこと?」
「うん‥‥嫌じゃなかった?」
この七年間
タカシ先輩は音楽の先輩として
男性の友人として
私の側に居続けてくれた
お母さんとも仲が良いし
柊が日本に帰って来た時に
みんなで一緒にご飯を食べたことも何度かある