禁断兄妹
第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①
私はその後も
記憶を取り戻すに至った話を続けた。
タカシ先輩とたかみちゃんとの食事会の日の夜に
記憶を取り戻したい、取り戻そうって強く決心したこと
そして今日私が行ったのは
七年前に灰谷さんが紹介してくれたクリニックだったこと
その心理カウンセラーの先生が導いてくれた催眠療法の
不思議な体験と成功
そして
お父さんが危篤状態になった時のことと
柊の先輩を名乗る男に騙された時のことも
克明ではないにしろどんなことが起こったのか
言葉を選びながら口にした。
全ては過去の出来事
今の私を傷つけることはできない
先生が繰り返してくれた言葉は
お守りのように安心と勇気をくれて
私は取り乱すことなく話を続けることができた。
柊は
時に私を抱きしめ
背中をさすり髪を撫で
何度も熱い息を吐きながら
それでも
私の話をさえぎることなく
受け止めてくれた。
「柊、辛い‥‥?」
痛みに耐えるように眉を寄せ
瞳を切なく細めている柊
その頬を両手で包んだ。
「大丈夫‥‥全ては過去の出来事だから‥‥どれほど痛かったとしても、今の私達を傷つけることはできないから‥‥」
更に細くなった瞳
私は柊の額に
自分の額をコツリとつけて
「旅立つ前のお父さんと、奇跡のようなひと時を過ごせたのよ。それに灰谷さんは私を騙した男をやっつけてくれて、間一髪のところで救いだしてくれたの。そのお陰で私は柊を守ることができたわ‥‥」
「萌‥‥」
知ることの痛み
その中に
確かに存在していた喜び
「この喜びを、柊と分かち合いたいから‥‥だから私は、痛みの記憶も柊に伝えるの‥‥」
「萌‥‥ああ萌‥‥」
柊は私の両手に
自分の両手を重ねた。
「愛してるよ萌‥‥愛してる‥‥」
祈りの言葉のような囁き
私の手の中で柊が横を向き
その熱い唇が
私の手のひらに触れた。