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禁断兄妹

第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①


先輩は穏やかな声で
柊さんは素晴らしい男性だけど、俺には俺の強みがあると思っていた
一ノ瀬の側にいるというアドバンテージもあった
でも生かせなかった
七年も側にいたのに
そう言って少し寂しそうに笑った。


「おめでとう一ノ瀬。柊さんと仲良くな」


私が言いにくいと思っていたことを
先回りして言ってくれて
残念さを隠して
おめでとうとまで言ってくれて

こんなにも優しい先輩に
あなたを尊敬しているんです
だからこれからも仲良くしてくれませんか

そんな言葉はあまりにも図々しく思えて
飲み込んでしまった。


「なあ、側に柊さんがいるなら、代わってくれないか」


「はい‥‥」


ちょうどリビングに戻って来た柊に
私は携帯電話を差し出した。


「タカシ先輩が代わってって」


柊はふふっと笑いながら私の頬を撫でて
携帯電話を受け取ると


「久しぶり。萌を泣かせたね?」


柊は会話をしながらリビングを出て行って
しばらくしてから戻って来ると
私に携帯電話を返してくれた。


「何を話したの?」


「男同士の秘密。でも萌への伝言もある」


「伝言‥‥?」


「萌が暗くなって何も喋れなくなったみたいだから、伝えてくれって。『俺は先輩の道を究めるから、これからもよろしくな』だってさ。あいつ、これからも萌の先輩ポジションに居座るつもりみたいだね」


タカシ先輩‥‥!


「しょうがないから、これからも萌をよろしくって言っておいたよ」


「柊‥‥!」


タカシ先輩
ありがとう

ありがとう柊

私は肩をすくめた柊に抱きついて
そのシャツで目尻の涙を拭いた。


「小悪魔萌は俺のジェラシーなんてそっちのけなんだからなあ」


柊はため息交じりにそう言って
私の髪を撫でる。


「甘えてごめんなさい‥‥」


柊にも
タカシ先輩にも
甘えてごめんなさい
そしてありがとう

タカシ先輩との絆を一生大事にしよう
私は心に誓った。


「さあ、もうこんな時間だ。お風呂の用意ができてるから、入っておいで」


「うん‥‥」


夜が更けてゆく

私達の想いと
関わってくれたみんなの想いを
散りばめて

静かに煌めきながら

夜が更けてゆく

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