禁断兄妹
第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①
綺麗にリノベーションされたユーティリティとバスルーム
広々としたバスタブでゆっくり温まり
スキンケアをして髪を乾かして
買って来た下着とパジャマに着替えた私は
リビングに戻った。
ドアを開けると
照明は落とされ
音楽が聞こえて
さっきまでとは違う空気に
足が止まる。
サイドテーブルに置かれたランプの仄かな明るさの中
窓のほうを向いた一人掛けのソファに座る
柊の後ろ姿
その正面の分だけカーテンが開いていて
切り取られた漆黒の中
まっすぐに落ちてくる白い雪
低く流れるスローバラード
ああ
この曲は
お父さんの好きだった古い洋楽
柊
降り続ける雪の向こうに
あなたは何を見ているのだろう
何を思っているのだろう
足を進めると
柊がはっとしたように振り返った。
「‥‥相変わらず長風呂だね。寝てるのかと思った」
微笑みながら柊は立ち上がり
ステレオに歩み寄って
その音楽を消した。
「今日の萌の寝室だけど、いつも俺が寝室として使っている部屋のベッドで寝るといい。さっきシーツを替えておいたから。俺はここで寝るよ」
柊の言葉通り
リビングの壁際には
今日買って来たマットレスと布団が敷いてある。
柊がそれを買った時から
一つのベッドで寝るつもりはないんだなって思っていたけれど
やっぱり寂しい
「私がここに寝るから、柊は自分のベッドを使って」
「これは簡易的なもので薄いからね。こんなところに萌を寝かせるのは嫌だよ」
「じゃあ、柊のベッドで、二人一緒に寝ない‥‥?」
「そんな可愛いことを言われると嬉しくてたまらないけど、俺の理性が持ちそうもないから、それはできないな」
スモールステップの約束を
誠実に守ろうとしてくれている柊
それは私への愛ゆえ
もどかしくも
大切にされている喜び
「俺も風呂に入ってくるよ。テレビを見ていてもいいし、好きに過ごしててくれ。冷蔵庫にミネラルウォーターがあるから、ちゃんと水分も取るんだよ」