禁断兄妹
第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①
手を止め顔を上げると
燃えるような瞳のまま
首を横に振る柊
「少なくとも記憶を取り戻したばかりの今日じゃないって、言っただろう。七年も戻らなかった記憶だ。それだけの傷だったんだ。今無理をしてまた心に傷を負ってしまったら───」
「明日世界が終わるかもしれないわ」
柊の身体が
びくりと揺れた。
「柊への愛は永遠だけれど、今この時は今しかないの」
「萌‥‥そんな風に言われたら、俺は‥‥」
苦し気に細くなる瞳
「お願い、私の心と身体がどうなるか、一緒に見て欲しい」
「萌にそんなことを言われたら、俺の理性なんて消し飛んでしまう。萌が見たいよ。見たいに決まってる。すごく見たい」
うわごとのような熱っぽい囁きに
私の心も身体も熱く燃え上がる。
「本当に見ていいのか‥‥?」
「うん。見て欲しい」
「少しでも嫌だと思ったり怖いと思ったりしたら、やめるんだよ。それだけは約束してくれ」
「うん」
敷布団の端と端
手を伸ばしあっても届かない
けれど互いの目に全身を映しあえる距離
私はパジャマのボタンを全て外すと
肩から滑らせるように後ろへと落とし
下に着ていたキャミソールを
交差した両手でまくり上げるようにして脱いだ。
押し込められていた胸が弾むように零れた瞬間
柊が喉を鳴らす音がはっきりと聞こえた。
見て欲しいと自分で決めたことだけれど
恥ずかしい
それでも私を見て欲しい
確かめて欲しい
私は両手を横に下ろし
背筋を伸ばした。
「綺麗だ、萌‥‥すごく綺麗だ‥‥」
驚きと感嘆の入り混じった囁きが
熱く掠れて薄闇に溶ける。
柊は壁につけていた背中を起こし
身を乗り出すように両手を前についた。
「いつの間にか、こんなに成熟した身体になっていたんだな‥‥」
眩しいものを見るように陶然と細められた瞳が
私の胸元へと向けられる。
その視線を追うように
私も自分の胸を見下ろした。
仄かな灯りの中でも
二つの先端が固く立ち上がっているのがはっきりとわかる
そこへ絡みつく視線を肌で感じて
震えの走った胸が小さく揺れた。