禁断兄妹
第9章 運命の出会い
「‥‥どうだ」
帰りの車の中
ずっと黙っていた父さんが口を開く。
「何が」
「美弥子さんのことだ」
「ああ、悪くないんじゃない」
俺達は前を向いたまま
いつものようにぶつぎれの会話を交わす。
「萌の父親って、今どうしてんの?」
「‥‥生まれる前に別れたと聞いたが、よく知らん」
「なんでさ。気にならないの?」
「別に‥‥出会う前のことを知っても、仕方ないだろう」
「ふーん」
まあ父さんのような性格なら
本当に詳しく聞いてないんだろう
俺達は再び無言になる。
「母さんの‥‥夏巳のことを、忘れた訳じゃないから」
父さんがぽつりと呟いた。
「わかってるよ」
母さんの死に
父さんも父さんなりに辛い思いをしたこと
俺はわかっているつもりだ。
「萌には父親が必要だと思ったし‥‥」
父さんはそう言って黙った。
俺にも母親が必要だと
そう思ったんだね
大きなお世話だ
母親は一人でいい
そう俺が口答えすることを見越して
口に出さないところが父さんらしい。
「再婚話、進めていいか?」
「うん。いいよ」
「そうか‥‥ありがとうな」
父さんがほっとしたような声を出した。
ありがとうなんて言われたのは
初めてのような気がして
俺は苦笑した。
父さんもちょっと笑った。