禁断兄妹
第92章 禁兄 The Final~Love Never Dies~②
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「萌に、渡したいものがあるんだ」
求め合うままに何度も身体を重ねた後の
気怠くまどろむような満ち足りた時
寄り添い過ごしていた身体を起こし
俺はサイドテーブルに置いていたペンダントを手に取った。
蓋を開け
手のひらの上に取り出したリングを乗せる。
仄かな灯りの中でも
あの日の海のように
眩しく輝いている二つのリング。
「萌と一緒に海に行ったことがあっただろう?このリングはあの後すぐに買ったんだ」
「あの海でのことは、忘れられない‥‥」
───願わくば、姫の永遠の愛を頂きたい───
───私の愛は、永遠にあなたのものです───
あの時交わした愛の言葉
俺はこうして形にしたけれど
七年もの間
二つのリングは互いの指にはめられることはなく
ずっと俺と共にあった。
「この七年の間、萌の記憶が戻るのを今か今かと待っていたけど、その気配がなくて‥‥絶対に戻って俺との愛を思い出してくれるんだって信じていたけど、正直何度も心が折れかかった。そんな時にこのリングが力をくれたような気がするよ」
砂を噛むようなやり切れない時
先が見えず見返りもないように思えた時
身体が疼いてどうしようもない時
永遠の愛を誓ったあの日のことを思い出しては
萌との幸福な未来を胸に描き
自分を奮い立たせた
必ずこの先には萌との幸せな未来がある
何度も自分に言いきかせたその信念は
真実となった。
「結婚しよう、萌」
まっすぐに俺を見つめていた萌
その瞳が静かに潤んでゆく。
「はい」
「ずっと二人で生きていこう」
「はい‥‥っ」
声を震わせた萌の瞳から
涙が零れ落ちた。
どんな宝石よりも美しい萌の涙
唇を寄せ舐めとったそれは
今までの辛苦が浄化された
澄んだ喜びの味がした。
「萌は大きいほうを手に取って。そして左手を出して‥‥」
生まれたままの姿で
俺達は互いの左手の薬指に
リングをはめあった。
「綺麗‥‥ありがとう、柊‥‥」
「うん。よく似合うよ」
差し込む光のような萌の笑顔
俺の悲しみを溶かし空へと還す
天使の微笑み
「‥‥病める時も、健やかなる時も‥‥」
萌が澄んだ声で囁いた。
「ねえ、この誓いの言葉を知ってる?」