禁断兄妹
第14章 地獄への入り口
こんな時間にもかかわらず
まだ人で溢れているどこかの駅前
でっかいオブジェのような何かに
もたれている俺
「やだ、ちょっとー、服もすごいことになってるわよ」
和虎は俺の肩や背中の埃を払う。
「転んだの?怪我してない?」
「‥‥ごめん」
「ん‥‥?」
「ごめんな‥‥こんな時間に」
「‥‥柊兄の為なら、いつでもどこでも駆けつけるよ」
俺の異変を察しているのか
和虎は優しい口調で
俺の肩を叩いた。
「和虎‥‥」
「なあに」
「俺が、今、人を殺してきたって言ったら‥‥どうする‥‥?」
「へ?」
和虎は目をぱちくりしたけれど
すぐにいつもの笑顔になった。
「手をとって逃避行ね。アメリカ?フランス?‥‥二人で行こう」
和
虎
「‥‥柊兄‥‥?」
涙が頬を伝った。
俺の中の何かがプツンと切れて
後から後から
涙が頬を伝っていく。
俺は両手で顔を覆った
「柊兄‥‥」
「‥‥俺と萌、血が繋がってた‥‥」
「‥‥え‥‥?」
「母さんがまだ生きてた時に、オヤジ、美弥子と不倫してた‥‥その子供が、萌だった‥‥」
「‥‥」
「あいつら、許さない‥‥絶対‥‥っ‥‥許さ‥‥な‥‥」
涙が止まらない
嗚咽が漏れて
もう言葉にならない
俺は膝から崩れ落ちた。
胸が痛くて
痛くて
気が狂いそうだ。
この身を粉々に砕かれても
こんなに痛くは
ないだろう