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禁断兄妹

第22章 俺はもう、あいつのことは忘れる


「なっ‥‥!!」


和虎がガタンと椅子を蹴って立ち上がる。


「何言ってんだお前!」


「‥‥見たままを言っただけだよ。それじゃ」


「‥‥っ」


言葉に詰まった和虎
眼鏡は微笑んだ顔のまま背を向けて
店を出て行った。


「ご、ごめんね柊君、私が変なこと聞いたから‥‥」


オロオロするママに俺はひらひらと手を振った。


「別にいいよ」


「あんなこと言うような子じゃないのに‥‥本当ごめんなさい」


「‥‥あいつっ、ふざけたこと言いやがって‥‥っ」


立ちすくんでいた和虎が吐き捨てた。

和虎はマジになると男になる。


「‥‥和虎ぁ、本気にするな。座れよ」


「でもっ」


振り返った和虎の顔が殺気だっている。
今にも店を飛び出して追いかけて行きそうだ
俺は顔を横に振った。


「いいから」


「‥‥」


和虎はどすんと椅子に腰を落とすと
大きく息を吐きながら両手で顔を覆った。


「‥‥悪い、柊兄」


「なんでお前が謝るんだよ」


「あんなふざけたこと言わせて‥‥俺のせいだ」


「まーな。お前に気があるから、俺のこと面白くないんだろ」


手を下ろして俺を見る顔があまりにも暗くて
俺は笑いながら和虎の肩を小突いた。


「どっちかってと、今のお前のほうが、死にそうな顔してるよ」


和虎はふふっと
ぎこちなく笑った。

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