禁断兄妹
第22章 俺はもう、あいつのことは忘れる
「さて。俺も帰るかな」
「えっ、マジ?」
和虎が慌てる。
「やっぱり気分悪くした?だから帰んの?」
「まさか。明日撮影入ってるし、最初からこれくらいで帰るつもりだっただけ」
「じゃあ俺も帰るよ」
店の外に出た俺達は
向かい合ってなんとなく無言だった。
「ヘイ、柊兄」
和虎がハイタッチを要求するように
両手を挙げる。
手を合わそうと俺も両手を挙げたら
抱きつかれた。
俺とほぼ同じ身長の和虎
俺の肩に顎を置くようにして
無言で
万歳をしたままの俺を抱き締める。
「おい‥‥酔ってるのか?」
「ごめん‥‥なんだか怖くて‥‥柊兄がどっか行っちゃいそうで、怖い」
「なんだよ、あいつの言葉真に受けてんのか?」
和虎は黙ったまま
俺にしがみつくように肩に顔を埋める。
「あいつ、お前に惚れてんだよ。嫌味の一つも言いたかったんだろ。それに、人は誰でもいつか死ぬさ。そうだろ?」
「‥‥」
「‥‥もう離れろ。人が見てるぜ」
和虎は背中に回した腕をほどいて
ゆっくりと俺から離れた。