禁断兄妹
第22章 俺はもう、あいつのことは忘れる
「俺はもう、あいつのことは忘れる‥‥だからお前も、忘れてくれ」
「‥‥忘れる‥‥?」
呻くように繰り返した和虎を
俺は黙って見ていた。
「‥‥どうしてそんなこと言うんだよっ」
和虎は声を荒げた。
「柊兄、あんなに萌、萌って言ってたくせにっ、いつもいつも、萌のことばっかりで、俺より、何よりっ、萌が一番だったくせに‥‥っ」
和虎は俺の胸を
ドンと叩いた。
「忘れられる訳ないだろ?!忘れられないんだろ?!だからそんな顔、してるくせに‥‥っ」
ドン
ドン
和虎が俺の胸を叩く。
「‥‥なんでお前が泣くんだよ」
「柊兄が‥‥泣かないから‥‥」
立ち尽くしたまま
子供のようにぼろぼろと泣く和虎の頭を
俺は片手で抱き寄せた。
「代わりに泣いてるってか‥‥アホか」
「アホは、柊兄だっ」
泣き止まない和虎
俺はもう片方の手で
和虎の柔らかい髪をぐしゃぐしゃとかき回した。
「泣き止まないと、超無造作ヘアになるけど」
「‥‥うーっ‥‥」
雨に濡れた犬のようにプルプルと頭を振りながら
和虎はやっと俺から離れた。
「じゃあな‥‥又飲もうぜ」
言いながら手を上げる俺に
涙で濡れた顔のまま和虎も手を上げる。
背を向けて歩き出した俺に
「柊兄!」
俺は振り返った。
「好き!」
「‥‥知ってるよ」
俺の声に
和虎が泣き笑いの表情をする。
俺はもう一度手を振ると
また
歩き出した。