禁断兄妹
第26章 君は愛されている
「さてとっ」
注文を済ませた和虎さんはパタンとメニューを閉じると
悪戯っ子のような顔をした。
「柊兄がいない間に、思いっきり陰口でも叩いとこっか!電車の中でくしゃみ止まらなくしてやろーぜっ」
「え、ええっ」
「萌ちゃんも色々言いたい事あるだろ。俺が聞いてあげるからさっ」
「いえ、私はそんな‥‥」
「そうかなあ‥‥言いたい事、結構あるでしょー。勝手に携帯の番号変えて音信不通とかさ、あり得ないよねっ」
和虎さんはテーブルの上に両肘をつくと
頬杖をついて私の顔を覗きこむ。
近い‥‥
しかもキラキラ眩しくて
目のやり場がない。
「あはは、その困り顔がいいーっ。萌だけに、萌えるーっ。もっと困らせてみたくなっちゃうなあっ」
その楽しそうな笑顔につられて
私は思わず笑った。
「あ、やっと笑ったっ。やっぱり笑顔の方が、いいなあっ。ね、もっとこっち見て笑って?」
「あ、はい‥‥」
「あはは、その引きつった顔もいいねえ」
「‥‥」
笑顔の和虎さんの言葉尻には
全部に音符がついているよう
話しているうちに
軽快なペースに巻き込まれていく。