禁断兄妹
第27章 俺にとどめを刺せ
駆け寄る私にお兄ちゃんは振り向かず
首だけ動かして一瞬だけ私に横顔を見せると
前に向き直って歩きだした。
「あの、待って‥‥っ」
隣に並ぼうとするけれど
歩く早さがいつもと違う
追いつけない
私は自然と
お兄ちゃんの斜め後ろをついて行く形になった。
「もうこんな時間だ‥‥送ってく」
前を歩くお兄ちゃんが唐突に口を開いた。
久しぶりに聞いたその声には
感情がなくて
嗅いだことのない香りと一緒に
風に乗って私に届いた。
お兄ちゃんはそれきりもう何も言わずに
俯き加減で前を歩いていく。
来てくれてありがとう
突然でごめんなさい
久しぶりだね
用意してあった言葉は口に出せないまま
私の胸の中に
音もなく沈んでいった。