禁断兄妹
第27章 俺にとどめを刺せ
前を歩く足が
緩やかに動きを止めた。
顔を上げると
マンションの前。
「‥‥見舞い‥‥近いうちに行こうと思ってるから‥‥」
お兄ちゃんが口を開いた。
びっくりして
すぐには言葉が出てこない。
「‥‥ほっ、本当っ?」
「ああ‥‥」
感情のない棒読みの声
でも
お兄ちゃんは嘘をついたりしない
きっと来てくれる
「良かった‥‥お見舞いに来てくれたら、お父さん喜ぶよ‥‥」
お兄ちゃんは振り返らずに俯いたまま
返事をしない。
息苦しくて
私は言葉を続けた。
「お父さんね、お兄ちゃんの出てる雑誌、よく見てるよ。お母さんに言って、買って来てもらってるみたい」
「‥‥」
「黙ってパラパラ見てるんだけどね、この前独り言みたく、この服似合わんなーとか言ってた。ひどいよねっ」
「‥‥」
笑いかけても
お兄ちゃんは黙ったまま
「あ、ねえ、夕御飯食べてないんじゃない?今日はお母さん病院に泊まりだし、冷蔵庫に色々あるから、
あがって食べて行ったら?」
「‥‥」
やっぱりお兄ちゃんは
振り返らない
この無機質な沈黙が
腹立たしくて
悲しくて
泣きたくなる。
もう嫌だ
一刻も早く終わらせて
家に帰ろう