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禁断兄妹

第28章 俺にとどめを刺せ ※※柊side※※


何度も爆発しかける感情
力づくでねじ伏せながら
やっとマンションの前にたどり着いた。

俺はもう
くたくただった。


「見舞い、近いうちに行こうと思ってるから」


さっきから
ずっと頭の中で用意していた言葉

萌が来てくれた意味
俺はちゃんと分かってる

それだけは伝えたくて
選んだ言葉。


「ほっ、本当っ?」


驚いて上ずる萌の声


「ああ」


「良かった‥‥お見舞いに来てくれたら、お父さん喜ぶよ‥‥」


ほっとしたような
無防備な声でそう言うと


「お父さんね、お兄ちゃんの出てる雑誌、よく見てるよ。お母さんに言って、買って来てもらってるみたい」


萌が思い切ったように
話し出した。


「黙ってぱらぱら見てるんだけどね、この前独り言みたく、この服似合わんなーとか言ってた。ひどいよねっ」


背中を向けていてもわかる
笑顔が見えるような声
以前と変わらない無邪気な調子

すぐに立ち去ろうと思っていた俺は
予想外のことに頭が真っ白になる。


「‥‥あ、ねえ、夕御飯食べてないんじゃない?今日はお母さん病院に泊まりだし、冷蔵庫に色々あるから、あがって食べて行ったら?」


追い討ちをかけるように
投げ掛けられた言葉

真っ白な俺の頭に
一気に真っ赤な血がかけ登る。

どういう意味だ

俺を引き留めようとしてるのか

あの夜のことを
なかったことにしようと
してるのか

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