禁断兄妹
第31章 同じ世界を生きよう
萌は俺の言う通り
後ろから抱き締められたまま生真面目に料理を続ける。
茄子の味噌汁に続き
千切りのピーマンとキャベツが
俺の目の前でためらいもなく混ぜ合わされていく。
「‥‥萌って俺のこと好きなんだよね?」
「え‥‥?うん‥‥」
恥ずかしそうに小さく頷く萌。
「謎過ぎて‥‥逆に愛おしくなるな」
ため息をついた俺に
萌がゆっくりと話し出す。
「謎かなあ‥‥私はずっと、お兄ちゃんのこと、好きなんだけど‥‥」
俺の言葉を何か勘違いしてる萌は
はにかんだ笑顔を浮かべる。
その勘違いに乗じて
俺は聞いてみたかったことを口にしてみた。
「いつから俺のこと‥‥一人の男として好きだったの?」
こんなこと自分から聞くなんて恥ずかしいけれど
聞いてみたい。
「えっと‥‥お兄ちゃんて、お母さんとお父さんの前では、ほとんど私に構わないでしょう?素っ気なくて。
なのに二人でいる時は全然違って‥‥お姫様みたいに大事に、大人っぽく扱ってくれたよね。妹っていうより、一人の女の子として大切にしてくれているっていうか‥‥それが二人だけの秘密みたいですごく嬉しかったの。
自分はお兄ちゃんにとって特別な存在なんだって思えたし、私もお兄ちゃんのことを特別に思ってた。
私のお兄ちゃんに対する感情って、昔から家族愛と恋愛の境界線がなかった感じなの‥‥」
萌の言う通り
俺は基本的に三人とはいつも距離を置いていた。
単にすかしたガキだったってこともあるけど
この三人は家族なんだろうが俺は違う
そう思いながら暮らしてきた。
萌は本当に可愛かったけれど
俺の特別な感情を父さんと美弥子に知られるのは嫌だった。
だから二人でいる時だけ
俺は萌のナイトをきどっていたんだ。
でも萌もそんな風に思ってくれていたなんて
知らなかった。