禁断兄妹
第31章 同じ世界を生きよう
「‥‥はっきり意識したのは、お兄ちゃんが家を出ていって、二ヶ月くらい経った頃かな‥‥
友達がね、お兄ちゃんの載ってる雑誌を見せてくれたの。その時ね、わかったの‥‥私お兄ちゃんのこと、一人の男の人として好きなんだって‥‥」
「そっか‥‥」
胸の中
愛しさが膨れ上がって
溢れて
萌を抱く腕に俺は静かに力をこめた。
「モデルやってて良かった‥‥」
「ふふ‥‥メンノンの秋コーデ特集だった。あれすごかったな‥‥」
「ふーん‥‥どんな写真だった?」
「えっとね‥‥」
振り返った萌が俺からビールを取り上げて
片手を上にあげさせる。
「こっちの腕が、こう髪をかきあげて‥‥でね、顎をもう少し上げて‥‥顔はね、冷たく見下ろす感じ。口は少し開いてて‥‥」
「‥‥こんな感じ?」
言われるままのポーズで冷たく見下ろすと
萌ははっとしたように目を見開いて
俯いた。
「う、うん‥‥そう、そんな写真‥‥」
「なんとなく思い出した‥‥あれは評判が良かった」
俺は表情を崩して笑った。
「萌はああいう悪い感じの男が好きなの?結構シャツのボタン外れてたような気がするけど」
俯く萌の唇に
軽く音を立てて口づける。
萌は顔を上げない。
「‥‥ん?‥‥どうした?」
「‥‥あのページ見た時ね、あんまり格好良くって、お兄ちゃんはもう違う世界の人なんだなあって思ったの‥‥それがすごく悲しかったの‥‥」
俯いたまま萌が呟いた。
「どうしてこんなに悲しいのか考えたら、私、お兄ちゃんのことが好きなんだって、わかったの」
「萌‥‥」
「今日もね、最初、何も喋ってくれなくて、私を見てもくれなかったでしょ‥‥ああ、やっぱりそうなんだ、もう住む世界が違うんだって、思って‥‥すごく、悲しかっ、た‥‥っ‥‥」