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禁断兄妹

第32章 心の準備


***柊side ***                                       
                

手料理が並ぶダイニングテーブル
萌は俺の正面に陣取って
料理を口に運ぶ俺を神妙な顔で見守っている。

俺は食事よりも早く萌を抱きたかったけれど
ゆっくり進みたがっている様子の萌のペースに合わせることにした。

久しぶりに食べた萌の手料理はお世辞ではなく美味くて
上手になったな、と言うと
萌は嬉しそうに笑った。

そして
サラダと味噌汁を口にする俺を
あからさまにじっと見ている。


「本当に食べるか、試したかったの?」


俺は笑った。


「そういうわけじゃないけど‥‥本当に嫌いなのかなって‥‥」


「口にできないほどじゃない‥‥それにこの家で好き嫌いをするつもりはないよ」


「本当は嫌いなのに、無理して食べてるの?」


「まあ、萌が作ってくれたしね」


俺がそう言うと
萌は複雑な顔をした。


「私もね、好き嫌いはしないほうがいいと思う‥‥でも、我慢とか、無理したりは、あんまりしないで欲しいな‥‥」


萌は両手の指をくっつけたり離したりしながら俺を見る。


「これからは、なんでも言って欲しいな‥‥」


萌の思考回路は相変わらず謎だけど
可愛い事を言ってくれる。


「なら、言おうかな」


俺は箸を置いた。


「茄子とピーマンは特に嫌いなんだ‥‥残してもいい?」


「え‥‥?あ、うん、」


「じゃあ、ごちそうさま」


首を傾げるようにお辞儀すると
萌は目をぱちくりした後
クスクス笑いだした。


「何かおかしい?」


「ううん‥‥なんだか新鮮」


俺はビールを口にしながら立ち上がった。


「このテーブル大き過ぎて萌と遠い‥‥おいで、ソファに座ろう」


「え、あ、でも食べ終わったなら先に片付けちゃうね」


「そんなの後で俺がやるよ‥‥いいからおいで」


手を伸ばしたまま待っている俺に
萌もぎくしゃくと立ち上がって手を伸ばす。

俺は指を絡めるように繋ぐと
萌の手を引きリビングへ向かった。

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