禁断兄妹
第32章 心の準備
右手は繋いだまま
左手で萌のポニーテールのシュシュを抜き取って
その髪を指で梳くようにほどく。
「取っちゃったの‥‥?」
萌が軽く頭を振る。
「うん。萌の髪、好きだ‥‥水みたい」
さらさらと
指に絡めては零して楽しむ。
「ね、貸して」
「ん」
俺が渡したシュシュを手にすると
萌は繋いでいた手を離して
俺の前髪に両手を伸ばす。
「お兄ちゃん前髪長いから‥‥おでこ全開にしてみよう‥‥」
「どうぞ」
「この辺で一つにまとめて‥‥あはは、もう可笑しい」
萌はころころと笑いながら
俺の額の上でまとめた前髪にシュシュをくくりつける。
「きゃー完成!やだー!」
俺の膝の上
心底可笑しそうに身体を揺らして笑う萌
可愛くて
その様子に俺も笑ってしまう。
「自分でやっておいて、なんでヤダなんだよ」
「だって‥‥すっごく可愛いの」
「カッコ悪いって意味だろ‥‥取ってよ」
「やだ」
「‥‥」
こんな何気ないやり取りが楽しくて
嬉しくて
「さっきおかずを残したバツとして、このままでーす」
楽しそうに両足をぶらぶらさせながら笑う萌
可愛い
萌
俺はお前を愛するあまり
どれほどお前を傷つけただろう
ごめんな
でも
またこうして昔と変わらず無邪気に笑ってくれる
ありがとう
「本当に‥‥ありがとう」
笑顔の萌の頬に唇を押し当てると
萌は不思議そうな顔
「喜ばれるとバツにならないから取ろうっと」
萌はシュシュを取って
俺の前髪を整え始める。
「カッコよく整えてね、ヘアメイクさん」
「ふふ」