禁断兄妹
第32章 心の準備
「萌‥‥?」
「お兄ちゃんのお母さんは、なんて名前‥‥?」
夏巳
でも
言葉にはできなかった
泣いてしまいそうで
黙ったままの俺を
萌が抱き締める。
「我慢したり無理したりしないで欲しいっていうのは、こういうことだよ‥‥」
「‥‥」
「たとえば、もし悲しかったら、私にも言って欲しい。全然頼りには、ならないかもだけど‥‥こうすることはできるから‥‥」
俺の背中
萌の手に力がこもる。
温かい
「うん‥‥」
俺はそう言うのが精一杯で
目を凝らして遠くを見つめた。
男はね萌
泣いたりしないもんだよ
それも好きな女の前で泣くなんて
少なくとも俺にはできない
泣かせるようなことを
言うなよ